弁理士として独立開業し、気付いたことを綴っていきたいと思います。
テーマを決めて、一話完結形式で記していく予定です。
  • 第3話

     日本では、特許出願し(特許法36条)、審査請求後(同法48条の2~4)、最初の通知で登録となる率(拒絶理由が通知されることなく一発で登録となる率)は、14.3%(2022年1月~12月)です(https://www.jpo.go.jp/toppage/pph-portal-j/statistics.html)。すなわち、85%以上は、拒絶理由通知が来ることになります。

     拒絶理由通知(同法50条)は、同法29条、29条の2、36条等の要件を満たさない旨の通知です。これらのうち、同法36条違反は、記載不備であり、出願代理人の能力が低いことが原因です。すなわち、代理人にとって、恥ずかしい拒絶理由です。

     貴社が取引している特許事務所が、頻繁に同法36条違反の拒絶理由通知を受けるようでは、その事務所は、出願代理人としての能力が低いと判断すべきです。

  • 第2話

     第1話に引き続き、Webサイトによる特許事務所の良し悪しの見分け方を記します。

     Webサイトを作成しても、そのまま放置しては意味がないどころか、却ってマイナスの効果しかありません。Webサイトは、情報発信者とその情報に接した人とのコミュニケーションの場です。コミュニケーションとは、一方通行の情報発信ではなく、相互に情報を交換するものです。

     Webサイト作成者がこのような情報を発信したいと思っても、そのWebサイトを見た人が、その通りに受け取ってくれるとは限りません。Webサイト作成者の思いとは異なる解釈をすることも考えられます。このため、Webサイトを見た人からの反応によって、Webサイト作成者の思いがより適切に伝わる様に、Webサイトを更新する必要があります。

     特許事務所の中には、Webサイトはあるものの、何年もサイトを更新していないところもあります。1年以上Webサイトが更新されていない事務所は、管理の行き届かないだらしのない事務所です。そのような事務所に産業財産権(特許、実用新案、意匠、商標)の出願等を依頼しても、顧客情報や出願データの管理等が適切に行われていない可能性があります。

     産業財産権を含む知的財産権は、その企業の価値を高めるための有効な手段です。このため、産業財産権の出願等を依頼した特許事務所が、顧客情報や出願データの管理等を適切に行わない場合、結果的にその企業の価値を下げることになってしまいます。

  • 第1話

     弁理士として独立開業し、何でも自分でやるようになると、他の特許事務所の粗がよく見えるようになります。

     そこで、Webサイトを通して分かる特許事務所のリアルな姿を記します。

     Webサイトのドメインには、“.com” “.jp” “.co.jp”等があります。

     “.com”は、“commercial(商業)” を表すドメインです。

     “.jp”は、“japan(日本)”を表すドメインです。

     “.co.jp”の“.co”は、“commercial(商業)”を表すサブドメインであり、“.co.jp”は日本で登記された会社を表すドメインです。

     特許事務所は、産業財産権(特許、実用新案、意匠、商標)に関する特許庁への出願代行等を主な業務とする弁理士事務所です。その特許事務所のWebサイトのドメインに、“.com”や“.co.jp”を使用するのは、不適切です。

     Webサイトのドメインに“.com”や“.co.jp”を使用している特許事務所は、所長(代表弁理士)がITに疎く、無知無教養なIT技術者にWebサイトの制作を丸投げしていると解されます。そのような特許事務所に、特にIT系の特許出願を依頼しても、質の高い出願業務ができるとは思えません。

     さらに、複数の言語に対応したWebサイトを有する特許事務所もあります。複数の言語に対応したWebサイトを作成する際、ドメインの次に各言語を表すサブディレクトリを配置し、そこに各言語コードを記載します。言語コードは、ISO-3166で定められており、日本語コードは“ja”なので、日本にある団体等が作成する日本語Webサイトは、“.jp/ja”を用います。

     ところで、言語コードとは別に、各国を表す国コードがISO-639で定められています。日本の国コードは“JP”です。

     特許事務所のWebサイトの中には、言語コードと国コードを混同し、日本語Webサイトのサブディレクトリに“jp”を記載しているところもあります。

     日本の場合は、言語と国が1対1に対応するので問題ありませんが、世界ではそのような国ばかりではありません。例えば、英語を公用語とする国として、イギリスとアメリカがあります。英語の言語コードは“en”ですが、イギリスの国コードは“GB”であり、アメリカの国コードは“US”です。

     複数言語に対応したWebサイトを作成する際、言語コードと国コードを混同しているのは、作成者が無知無教養であることを示すと共に、その作成を指示した者も同様に無知無教養であることを示しています。特許事務所であれば、作成者がその事務所のシステム要員又は外注業者であり、指示者が所長ないし代表弁理士です。そのような特許事務所に、外国出願を依頼しても、質の高い出願業務ができるとは思えません。