弁理士として独立開業し、気付いたことを綴っていきたいと思います。
テーマを決めて、一話完結形式で記していく予定です。
  • 第4話

     [当事務所の特徴]でも説明したように、知的財産権は、様々な法律で保護されます。

     その中でも、著作権は、「権利の享有及び行使には、いかなる方式の履行をも要しない。」(ベルヌ条約5条2項)。日本は、ベルヌ同盟国であり、「著作者の権利及びこれに隣接する権利に関し条約に別段の定めがあるときは、その規定による。」(著作権法5条)ので、著作権は、申請・審査・登録などの手続きを一切必要とせず、著作物が創作された時点で付与されます(無方式主義)。すなわち、著作権は、創作された時点で自動的に付与され、著作者は、権利行使できます。これは、他人が同様の著作物を創作した場合であっても、影響を受けません。ただし、著作権を行使するには、著作者(著作権法2条1項1号及び2号)であることを立証しなければなりません。

     アメリカでは、著作権を得るためには政府機関への登録等が必要な「方式主義」が近年まで維持されてきましたが、1989年にようやくベルヌ条約を締結して「無方式主義」に移行しました。なお、日本がベルヌ条約を締結したのは1899年です。

     これに対して、産業財産権(特許、実用新案、意匠、商標)は、特許庁における設定登録が権利発生の要件となります(特許法66条1項、実用新案法14条1項、意匠法20条1項、商標法18条1項)。このため、自分が創作したアイデアであっても、他人が同様の内容で先に出願し、権利を取得すれば、自分のアイデアを実施できなくなってしまいます(先願主義)。その意味で、産業財産権は、早い者勝ちです。産業財産権の権利行使には、特許庁における登録によって権利者であることを立証できます。

     アメリカでは、最初に発明した者に特許権を与える「先発明主義」が近年まで維持されてきましたが、2013年にようやく特許法改正法が施行されて「先願主義」に移行しました。

     産業財産権の取得には、出願・審査費用、登録費用、さらに代理人に出願を依頼すれば、その費用が発生します。価値のない出願をして、権利を取得しても、権利行使しないのであれば、費用を浪費するのみとなってしまいます。その意味で、産業財産権の出願は、「慎重にかつ迅速に」が基本です。

  • 第3話

     日本では、特許出願し(特許法36条)、審査請求後(同法48条の2~4)、最初の通知で登録となる率(拒絶理由が通知されることなく一発で登録となる率)は、14.3%(2022年1月~12月)です(https://www.jpo.go.jp/toppage/pph-portal-j/statistics.html)。すなわち、85%以上は、拒絶理由通知が来ることになります。

     拒絶理由通知(同法50条)は、同法29条、29条の2、36条等の要件を満たさない旨の通知です。これらのうち、同法36条違反は、記載不備であり、出願代理人の能力が低いことが原因です。すなわち、代理人にとって、恥ずかしい拒絶理由です。

     貴社が取引している特許事務所が、頻繁に同法36条違反の拒絶理由通知を受けるようでは、その事務所は、出願代理人としての能力が低いと判断すべきです。

  • 第2話

     第1話に引き続き、Webサイトによる特許事務所の良し悪しの見分け方を記します。

     Webサイトを作成しても、そのまま放置しては意味がないどころか、却ってマイナスの効果しかありません。Webサイトは、情報発信者とその情報に接した人とのコミュニケーションの場です。コミュニケーションとは、一方通行の情報発信ではなく、相互に情報を交換するものです。

     Webサイト作成者がこのような情報を発信したいと思っても、そのWebサイトを見た人が、その通りに受け取ってくれるとは限りません。Webサイト作成者の思いとは異なる解釈をすることも考えられます。このため、Webサイトを見た人からの反応によって、Webサイト作成者の思いがより適切に伝わる様に、Webサイトを更新する必要があります。

     特許事務所の中には、Webサイトはあるものの、何年もサイトを更新していないところもあります。1年以上Webサイトが更新されていない事務所は、管理の行き届かないだらしのない事務所です。そのような事務所に産業財産権(特許、実用新案、意匠、商標)の出願等を依頼しても、顧客情報や出願データの管理等が適切に行われていない可能性があります。

     産業財産権を含む知的財産権は、その企業の価値を高めるための有効な手段です。このため、産業財産権の出願等を依頼した特許事務所が、顧客情報や出願データの管理等を適切に行わない場合、結果的にその企業の価値を下げることになってしまいます。