第22話
企業がブランドイメージを構築しようとする際、製品表面の地模様や包み紙の地模様を権利として保護できれば有効と考えられる場合があります。
これについて、特許庁の商標審査基準は、商標登録の要件である商標法3条1項6号(需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標)の適用について、「地模様からなる商標について」は、「商標が、模様的に連続反復する図形等により構成されているため、単なる地模様として認識される場合には、本号に該当すると判断する。ただし、地模様と認識される場合であっても、その構成において特徴的な形態が見いだされる等の事情があれば、本号の判断において考慮する。」と規定しています。すなわち、地模様については、原則登録不可ですが、特別顕著性があれば、登録される場合もあることになります。
拒絶査定に対する審判において、唐草模様からなる楕円輪郭の内部中央に唐草を組み合わせた楕円図形を表わしてなり、模様の部分は金色、その背影となる部分は薄緑色に着色された商標について、商標法第3条第1項第6号に該当し、商標登録を受けることができないとされました(昭和46年審判第6195号)。
これに対し、審決取消訴訟では、図形商標を構成する花や唐草模様は、単なる構成上の素材にすぎず、個々の素材がありふれたものであつても、それらの配置、組合せ、彩色等によって、全体として自他商品識別力を生ずることは、十分可能なことは見易いところであるとして、当該審決を取消しました(東京高裁昭和49年(行ケ)第7号同49年9月18日判決)。
製品表面の地模様や包み紙の地模様を商標登録するには、自他商品識別力を生ずることが必要とされます。そのために、その地模様を使用し続けても、その間に他社が類似の地模様を使用すれば、自他商品識別力を得られません。
そこで、まず、その地模様を意匠登録します。意匠登録には、新規性(意匠法3条1項)及び創作非容易性(同条2項)が要求されます。すなわち、新規の地模様の方が登録を受け易くなります。意匠権は、意匠登録出願の日から25年権利期間があるので(同法21条1項)、その間の使用によって、自他商品識別力を獲得できれば、意匠権満了後は、商標登録することによって、永続的にその地模様を使用できるようになります。