第20話

 近年、AI関連の特許出願が増え、特許査定率も上昇しています(https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/ai/document/ai_shutsugan_chosa/hokoku.pdf)。

 特許庁では、特許・実用新案審査ハンドブックの附属書A・附属書Bに合計25 のAI関連の事例を掲載しています(https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/document/ai_jirei/jirei.pdf)。

 ところで、AI関連発明は、ソフトウェア関連発明の一態様です。有効に権利行使できる明細書を作成するためには、まず発明の技術内容を的確に把握し、ソフトウェア関連発明の明細書作成の基本に沿って作成することです(参考資料(https://sophia-ip.jp/%e5%8f%82%e8%80%83%e8%b3%87%e6%96%99/)に格納した「『ソフトウエアに関する審査基準等』の歴史的経緯について」参照)。

 不十分な記載の明細書で権利行使すると、特許権侵害訴訟で当該特許が無効理由を有するとの理由で棄却されます(特許法104条の3第1項)。特にサポート要件(同法36条6項1号)を満たしていることは重要です。

 このサポート要件について、知財高裁は、「特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人又は特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。」と判示しています(知財高裁平成17年(行ケ)第10042号同17年11月11日大合議判決)。

 ソフトウェア関連発明の場合、特許法で保護されるのはソフトウェアのアルゴリズムです(https://sophia-ip.jp/%e5%bd%93%e4%ba%8b%e5%8b%99%e6%89%80%e3%81%ae%e7%89%b9%e5%be%b4/)。アルゴリズムは、フローチャートで表されます。

 しかし、ソフトウェア関連発明の特許出願の中にはフローチャートの添付されていないものもあります。これは、明細書作成者が発明の技術内容を理解していない、又はソフトウェア関連発明の明細書作成の基本を理解していないことが原因と思われます。

 特許法で保護されるのがソフトウェアのアルゴリズムである以上、要約書の【選択図】には、フローチャートが選択されるべきです。しかし、フローチャート以外の図面が選択されている特許出願も少なくありません。

 要約書の【選択図】にフローチャートが選択されているか否かを確認することで、AI関連発明を含むソフトウェア関連発明の特許明細書の良し悪しを簡単に見分けることができます。