第7話

 特許明細書を作成する際、「発明の効果」を記載すべきか否か、記載するとすれば、[発明の効果]の欄に記載すべきか、[発明を実施するための形態]の欄に記載すべきか、という議論をする弁護士や弁理士がいます(https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/3240)。

 しかし、権利行使、すなわち特許権侵害訴訟では、特許発明の技術的範囲(特許法70条)は、明細書の記載のみで判断されるのではなく、本件発明と対象発明との相対的な関係で判断され、特許請求の範囲よりも狭く解釈される場合と広く解釈される場合があります(それぞれ[参考資料]の「特許発明の技術的範囲とその解釈について」の裁判例1と裁判例2を参照)。

 特許明細書を作成する際、発明の効果等を書き過ぎると権利範囲を狭めるとの指摘は一理あります。しかし、進歩性欠如(特許法29条2項違反)の無効理由(同法123条1項2号)を有すると、権利を行使することができません(同法104条の3)。この場合、侵害訴訟の審理において、権利者が進歩性を有する旨を主張する際に、「有利な効果」をその根拠とすることができます(https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/03_0202bm.pdf)。特許明細書の記載と権利範囲との関係は、複数の要因によるバランスで決まるものです。