第6話

 日本では、特許権侵害訴訟を含む知的財産訴訟数が諸外国に比べ非常に少なく、特許権侵害訴訟での特許権者の判決における勝訴率が諸外国と比較して低くなっています(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/tf_chiizai/dai3/sankousiryou03.pdf)。

 これに起因して、“Japan Passing”と呼ばれる現象が起きています。これは、米欧中韓への出願をしても、日本への出願をしない特許出願ファミリー件数が増加していることです。

 これを受けて、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所の知的財産権専門部における特許侵害訴訟では、近年、特許権者の勝訴率が上がってきています。ただし、特許権侵害訴訟では、40%程度が和解で終結しています(https://www.ip.courts.go.jp/vc-files/ip/2023/2022_sintoukei_H26-r4.pdf)。裁判上の和解を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有します(民事訴訟法267条)。

 紛争解決のために訴訟を提起して判決がされると、その情報は一般に公開されます(民事訴訟法91条)。紛争を第三者に知られずに解決することを望む場合、当事者同士での和解が考えられます。当事者同士での和解の法的効果は、民法における契約の一類型です(民法695条、696条)。

 ところで、令和元年10月から知財調停が始まりました(https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section29_40_46_47/tizaityoutei/index.html)。知財調停は、原則として第三者に非公開です。知財調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有します(民事調停法16条)。