第19話
特許出願は、出願日から3年以内に出願審査の請求をすることができ(特許法48条の3第1項)、その期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は取り下げたものとみなされます(同条第4項)。
出願日から1年6月を経過したときは、その特許出願について出願公開されるので(特許法64条1項)、取り下げられた特許出願と同じ内容の出願をしても、同法29条1項(新規性)に該当し、拒絶されます(同法49条2号)。
特許出願の審査請求率は74.8%(2020年)です(https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2024/document/index/020202.pdf)。すなわち、特許出願されても4件に1件は、権利化されず、出願公開後に後願排除効(特許法29条1項又は同法29条の2)を有するのみです。
出願時に審査請求するか否か未定で、出願から3年経過後に権利化の必要性が生じた場合であっても、すでに権利化の機会は失われています。
これに対し、実用新案は、実体審査をせずに設定登録されるので(実用新案法14条2項)、実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、その権利を行使することができません(同法29条の2)。実用新案技術評価の請求は、実用新案権の消滅後においても、することができます(同法12条2項)。
実用新案権者は、実用新案登録出願の日から3年以内に、その実用新案登録に基づいて特許出願をすることができます(特許法46条の2第1項)。
以上から、出願時に審査請求するか否か未定の場合、とりあえず実用新案登録出願し、出願日から3年以内に権利化の必要性が生じた場合には実用新案登録に基づく特許出願をし、そうでない場合は実用新案登録を維持すれば、出願から3年経過後に権利化の必要性が生じた場合であっても、実用新案技術評価の請求をして、権利行使をすることができます。
実用新案登録に基づく特許出願制度を活用することで、出願・権利化に要する費用を抑えつつ、必要に応じて出願内容を権利化できます。