第38話

 パルワールド訴訟とその関連出願が話題になっています。

 任天堂株式会社と株式会社ポケモンが、ゲームソフト「パルワールド/ Palworld」を開発・配信する株式会社ポケットペアを相手に提起した特許権侵害訴訟です。

 ゲームソフトの権利侵害に対しては、著作権侵害と特許権侵害が考えられます。

 著作権侵害訴訟は類似性と依拠性を立証しなければならず、そのハードルは高いです。例えば、グリー株式会社が株式会社ディー・エヌ・エーらに対し、携帯電話機用インターネ ット・ゲーム「釣りゲータウン2」が原告の著作権を侵害する旨の訴えを提起し、第一審は差し止めと一部損害賠償を認めましたが、控訴審は著作権侵害を認めず、第一審判決を取り消しました。

 特許権侵害訴訟では、ゲームのアルゴリズムが原告の特許権を侵害する旨の訴えを提起することになります。原告は、元の出願の一部を分割して継続させ、さらに被疑侵害品に合わせた分割出願を行うことによって、訴訟を有利に進めることができます。

 被告は、被疑侵害品を設計変更し、特許権侵害を逃れることができます。この場合、原告は「均等論」を主張したり、設計変更後の製品に合わせて新たな分割出願を行うこともできます。

 また被告は、無効理由の抗弁を主張できます(特許法104条の3)。

 特許権侵害訴訟は、総合格闘技です。有利に戦いを進めていると思っても、相手が返し技を繰り出すことで、一瞬で逆転されることもあります。

 裁判所は、判決ではなく和解で纏めようとします(民訴法89条)。和解で裁判を終了することによって裁判所は判決を作成せずに済みます。裁判記録は原則として公開されますが(同法91条1項)、和解条項に係る部分は非公開なので(同条2項2文)、当事者は和解内容を世間に知られずに済みます。

 パルワールド訴訟では、訴えの根拠となった特許(原出願の優先日:2021年12月)の分割出願(特願2026-19762)が、情報提供によるゲームソフト動画を引用されて拒絶査定されたことが話題になっています。その引用ゲームソフト動画は2013年公開です。

 原告は、裁判所から和解勧試された場合、和解条件を有利にしようとして分割出願したものと思われますが、訴えの根拠となった特許権の優先日よりも前に公開されたゲームソフト動画を引用されて拒絶査定されたことにより、相手方に無効理由の抗弁理由を提供したことになります。すなわち藪をつついて蛇を出したことになります。