第28話
第27話では、仮想空間における画像の保護について、著作権法と意匠法の棲み分けについて説明しました。今回は、応用美術の著作権法による保護と意匠法による保護について比較検討します。
著作権法には、「著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。」(同法17条2項)と規定されています。これは、著作者人格権及び著作権の享有には、その登録等の行政手続きを要しないという意味です。
このため、著作者人格権及び著作権の享有については、司法機関である裁判所が判断します。著作権侵害を主張する者は、まず訴えを提起し、著作権の存在及び著作者であることを主張立証して認められる必要があります。
応用美術に対する著作権法の適用について知財高裁は、「著作権法2条1項1号の規定からすれば,実用目的の応用美術であっても,実用目的に必要な構成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるものについては,上記2条1項1号に含まれることが明らかな「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることができるのであるから,当該部分を上記2条1項1号の美術の著作物として保護すべきであると解すべきである。他方,実用目的の応用美術であっても,実用目的に必要な構成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができないものについては,上記2条1項1号に含まれる「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることはできないのであるから,これは同号における著作物として保護されないと解すべきである。」(知財高裁平成25年(ネ)第10068号同26年8月28日判決)と判示しています。
さらに、著作権侵害訴訟では、「著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう」(最高裁昭和50年(オ)第324号同53年9月7日第一小法廷判決・民集第32巻6号1145頁)ので、依拠性も主張立証して認められる必要があります。
これに対し、産業財産権法である意匠法では、権利の享有を行政機関である特許庁が立証してくれます。依拠性の立証も必要ありません。
以上から、応用美術を的確に保護するためには、意匠登録することが確実であり、結果的に低コストで保護することができます。